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会社員のための「3つの財布」③

老後資金は、時間を味方につけて準備する
これまで2回にわたり、第1の財布である「生活資金」と、第2の財布である「近い将来使うお金」について考えてきました。
生活資金は、いつでも使えることが大切です。
近い将来使うお金は、必要な時期に必要な金額を準備することが重要でした。
今回は、第3の財布である「老後資金」について考えてみましょう。 

老後資金は、ほかの2つの財布とは違う
老後資金の最大の特徴は、長い時間をかけて準備できることです。
例えば、30歳の会社員が65歳まで働くとすれば、35年間あります。
生活資金や3年後の住宅購入資金とは違い、老後資金は20年、30年という長期間にわたって積み立てることができます。
この「時間」が、資産形成において大きな武器になります。

毎月2万円を30年間積み立てると?
例えば、毎月2万円を30年間積み立てた場合を考えてみましょう。
運用せずに積み立てるだけなら、2万円×12か月×30年=720万円になります。
では、積み立てながら運用したらどうなるでしょうか。

年平均運用利回り30年後の資産額
0%約720万円
2%約985万円
3%約1,165万円
5%約1,665万円

※毎月末に2万円を積み立て、一定の利回りで複利運用した場合の概算です。
税金・手数料は考慮していません。将来の運用成果を保証するものではありません。
年3%で運用できた場合、積立元本720万円に対して、約445万円の運用益が生まれる計算になります。
これが、長期運用による「複利の効果」です。
複利とは、運用によって得られた利益を再び運用に回すことで、利益がさらに利益を生む仕組みです。
長い時間をかけることで、毎月の小さな積立が大きな資産に育つ可能性があるのです。

老後資金にもインフレの影響がある
ここで忘れてはいけないのが、インフレです。
以前のコラムでもご説明しましたが、物価が上昇すると、お金の実質的な価値は下がります。
例えば、物価が毎年2%上昇した場合、現在100万円で購入できるモノやサービスは、30年後には約181万円必要になります。
逆に言えば、30年後の100万円の購買力は、現在の約55万円に相当する計算です。
つまり、老後資金は単に金額を増やすだけでなく、インフレによる購買力の低下にも備える必要があるのです。
そのため、老後まで長い期間がある方は、預金だけでなく、株式型投資信託などを活用した長期的な資産形成も検討する価値があります。
もちろん、株式には価格変動があり、長期間運用すれば必ず利益が出るというわけではありません。

老後資金の準備に適した企業型DC
老後資金を準備するための代表的な制度の一つが、企業型確定拠出年金(企業型DC)です。
企業型DCでは、会社が掛金を拠出し、従業員自身が運用商品を選択して資産形成を行います。
企業型DCには、次のような特徴があります。

・原則として老後まで長期間積み立てる
・運用益が非課税になる
・老齢給付金は原則60歳以降に受け取る
・一時金で受け取る場合には、退職所得控除の対象になる

特に重要なのは、原則として60歳になるまで自由に引き出せないことです。
一見すると不便に感じるかもしれません。
しかし、老後資金という目的から考えれば、途中で生活費や趣味などに使ってしまうことを防ぎ、将来のために資産を確保できるというメリットにもなります。
なお、実際の受取開始年齢は加入期間などによって異なります。

退職が近づいたら運用方法も見直す
老後資金は長期運用が基本ですが、30歳の方と60歳の方では考え方が異なります。
30歳なら、運用できる期間が長いため、ある程度の価格変動を受け入れながら成長性を重視するという選択肢があります。
一方、60歳が近づき、数年後にまとまった資金を受け取る予定がある場合には、価格変動の大きい商品を減らすなどの対応も考えられます。
ただし、60歳で退職しても、その後の人生は20年、30年と続く可能性があります。
退職時にすべての資産を現金化する必要があるとは限りません。
「何歳まで運用するのか」だけでなく、「いつ、いくら使うのか」まで考えることが重要です。

老後資金は、早く始めるほど選択肢が広がる
老後資金の準備は、早く始めるほど長い時間を活用できます。
ただし、40代、50代から始めても決して遅いわけではありません。
大切なのは、今の年齢から無理なく続けられる方法を考えることです。
生活資金を確保し、近い将来の支出に備えたうえで、残りの資金を長期的な資産形成に回す。
これが「3つの財布」の基本的な考え方です。

次回はいよいよ最終回です。
「DC・NISA・預金をどう使い分ける?」というテーマで、3つの財布と金融商品を具体的に結びつけて考えてみたいと思います。

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