制度

ポータビリティ制度その⑤ DB―>企業型DC

確定拠出年金推進協会 代表理事の藤田雅彦です。

確定給付企業年金(DB)から企業型DCへの移行はとても難易度が高いです。

確定給付企業年金について

確定給付企業年金は、その名の通り、給付が確定している年金です。年金受給権者が存在する限り制度を維持していかなくてはならないという前提があります。

DBは会社が運用から給付まで責任を負う制度なので、従業員からすると安心感があります。しかし、運用環境が悪化した場合、会社に追加の負担を行う体力に乏しい場合、加入者あるいは受給者も含めて、給付の減額が行われることがあります。例えば、2003年にりそな銀行が国有化されたときに、給付の減額が行われました。

前回紹介した退職一時金制度と同様に、自己都合退職者は一定の減額、懲戒解雇者は不支給とされることが一般的です。一方、退職一時金制度と違い、年金資産の外部保全のしくみが整っており、資産が会社の資金繰りなどに流用されるような心配はありません。

確定給付企業年金の運営の主体は、生命保険会社や信託銀行などです。それらは、会社が積立てる資産を運用し、給付を行います。その手数料は資産残高の0.5%から1.0%程度です。年間に数百万から数千万円になることもあり、企業にとっての負担は大きいと言えます。

DBからDCへの制度移換

さて、DBからDCへの制度移換は、大企業中心に進んでいますが、その背景には、以下の要因が考えられます。
・DBは、終身雇用を前提として制度が作られており、長年勤務した人に手厚い年金を用意し、従業員に安心感を与えていました。現在は、転職が当たり前の世の中になり、その重要性が薄れてきました。
・企業にとって、年金資産の運用のリスクや資産管理の負担が大きいです。
・DCの普及により、「退職した人」の年金を管理・給付する負担を感じるようになった。
・運用に対する従業員の意識が変化し、DCを利用し社員の資産形成を支援するという立場に立てるようになった。

このように、DBからDCに切り替えたいというニーズは、非常に大きいのですが、その実情は、簡単ではありません。DBからの支給額をすべて移すのか一部を移すのか、また、過去の積立分も含めて移すのか将来の積立分から移すのかといった様々なパターンがあります。

検討のポイントは、以下の通りです。
・すでに、年金を受給している人をどうするのか?一時金で支払うとかの検討。
・従業員ごとのDCへの移換額をどう計算するのか?専門の知識が必要。
・積立不足があると移換できないので、資金は十分に確保できているか?

実は、最も実務でやっかいなのは、DBを運営している生命保険会社や信託銀行は、儲けの大きいDBを手放そうとはしないところです。

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